- 著者
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石川義之
- 出版者
- 大阪樟蔭女子大学
- 雑誌
- 大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, pp.137-153, 2007-01-31
筆者は,2001年に「インセスト家族の親子関係」という題名の論文を公表した(石川 2001;141-156)。本論文の実際の執筆時期は1993年で内容的にも古くなったので,2006年日本社会病理学会によりミニシンポジウムで「家族と暴力-"愛情"という名の支配-」というテーマで報告することを命じられたことを機会に,その後の研究成果を踏まえて,この「"愛情"という名の支配」という視点を導入して再考することにした。その際,父-娘インセストの発生メカニズムに焦点を当てる。 本稿は,下記の項目によって構成されている。0.はじめに1.1つのインセスト的虐待事例2.インセスト的虐待の定義 2-1.インセスト的虐待の位置付け 2-2.性的虐待の特徴とインセスト的虐待の概念3.インセスト的虐待の普及率 3-1.アメリカ社会での普及率 3-2.わが国での普及率4.インセスト的虐待の影響 4-1.インセスト的虐待の長期的影響 4-2.トラウマを生成する原動力 4-3.トラウマ生成原動力の作用 4-4.ジャノフーブルマンとフリーズの「基本的仮定破壊」仮説 4-5.トラウマ生成原動力による歪み→心理的破傷→長期的影響=「否定的」生活 4-6.「否定的」生活から肯定的生活へ 4-7.主観的トラウマ変数と客観的トラウマ変数 4-8.トラウマ生成原動力の強力化傾向5.インセスト的虐待の要因・条件 5-1.性的虐待の基本構図 5-2.インセスト的虐待の要因・条件-発生メカニズム-6.父-娘インセストの親子関係-家族力学要因- 6-1.父親のタイプ 6-2.娘・母親のタイプ 6-3.父-娘インセスト発生の力学:父-娘インセストへの寄与(誘導)要因7.インセスト的虐待への対応8.おわりに 8-1.伝統型インセストと現代型インセスト 8-2.「"暴力"による支配」と「"愛情"という名の支配」