著者
高嶋 正士 Masashi Takashima 神奈川歯科大学
雑誌
基礎科学論集 : 教養課程紀要 = Bulletin of liberal arts and science
巻号頁・発行日
vol.2, pp.67-81, 1984

筆者は差異心理学の発展に貢献したイギリスのゴールトンとアメリカのキャテルをとりあげて, 彼らの生涯と業績についてのべた。第2次大戦後の日本の心理学は, アメリカの民主教育にもとづいて, 個性尊重の教育がさけばれ, その線にそって急速に発展してきた。その一つが個人差心理学にまつわる諸問題であった。すなわち, 知能や学力, 性格や個性といったパーソナリティーに関するものである。その二は臨床心理学の発達と普及である。今日のように, 社会機構が複雑となり変化していくにともなって, さまざまな不適応症状(適応異常)を示す人が多くなったからである。したがって, 先進国ほど臨床心理学上の問題が深刻化してきている。この基礎的理解に個性心理学, 差異心理学が重要な役割をもつからである。