著者
古川 浩一 神田 達夫 舟岡 宏幸
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1039-1043, 2011-11-30 (Released:2012-01-27)
参考文献数
15

非閉塞性腸間膜虚血症(NOMI)は,腹部の動脈の攣縮・狭小化による血流低下で,広範囲の腸間膜虚血や腸管壊死が惹起されことが知られている。しかし,この腸間膜虚血症を従来の検査方法で,早期に選択的に簡便に評価することは困難と言える。一方,重症急性膵炎においてもNOMIはしばしば発生し,その病態や予後への関与が報告されている。今回,膵炎に発生するNOMIに対し,小腸粘膜に特異的に分布する腸管由来の脂肪酸結合蛋白(I-FABP)を測定し,NOMI診断への臨床的意義につき検討した。IFABPは急性膵炎の重症度に関連する病態を示し,腸間膜血流に関連する造影CT検査におけるグレードの膵外進展度に相応した数値上昇を認めた。潰瘍性大腸炎例での計測とI-FABPの小腸粘膜への特異的な分布を考慮すると,急性膵炎に併発する小腸粘膜傷害を直接的に反映していると言える。以上より,I-FABPは急性膵炎時のNOMIの早期診断や病態評価に有用な指標と考えられる。