著者
福室 憲治
出版者
特定非営利活動法人 日本医学図書館協会
雑誌
医学図書館 (ISSN:04452429)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.243-257, 1973-09-01 (Released:2011-09-21)
参考文献数
22
被引用文献数
1

わが国における病院薬局の薬品情報 (DI) 活動は, その必要性が提唱されてから10年余を経過した。そのあゆみの中で, 昭和40年に行なわれた第20回日本薬学大会でのDI活動シンポジウムは, DI活動に対する認識を深めるきっかけとなり, その後の発展に大きな影響を与えている。また毎年開催されている文部省主催の国公私立大学病院薬剤部職員研修会は, DI活動発祥の母体であり, 以後の発展に先進的役割を演じている。DI活動が要望されるようになった背景には, 多数の新医薬品が開発されるようになった結果, 多忙な診療業務に従事する医師は, それら医薬品の知識の整理をすることが困難となり, また薬剤師の立場から, 情報量の増大は, 従来個人的色彩の強い情報活動から, 病院レベルの組織的な情報活動を行なうことが必要になってきた。現在, 大病院の薬局には専任あるいは兼任の薬品情報係が置かれ, 薬剤師の職能として定着してきた。このような発展の経緯を辿ってきたDI活動の現況を, 東京大学病院薬剤部の例によって紹介する。DI活動は患者指向の情報サービスであるが, 医薬品情報資料に裏づけられており, したがって医学, 薬学図書館との協力関係が必要である。