著者
寺本(稲福) さゆり 諏訪 竜一 福澤 康則 川満 芳信
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.214-224, 2011 (Released:2011-04-22)
参考文献数
43
被引用文献数
17 20

琉球列島ではシィクワーサー(Citrus depressa Hayata)をはじめとした在来品種が数百年以上栽培されている.カンキツ類は特有の香気や機能性成分が含まれることから,沖縄で栽培されている 10 品種を材料とし,未熟ならびに適熟果皮に含まれる香気成分を GC-MS 分析によって,また HPLC 分析によりシネフリンと 6 種類のポリメトキシフラボノイド類(PMFs:シネンセチン,ヘキサメトキシフラボン,ヘプタメトキシフラボン,ノビレチン,ナツダイダイン,タンゲレチン)について分析を実施した.沖縄在来品種は,それぞれの品種において特有の香気成分プロファイルを示し,‘カブチー’(C. keraji hort. ex Tanaka var. kabuchii)にはセスキテルペン炭化水素類が 3.90–5.17%,‘ケラジ’(C. keraji hort. ex Tanaka)にはエステル類が 12.15–19.10%,シィクワーサーの‘大宜味クガニー’には,γ-テルピネンが 21.17–29.60%,p-シメンが 6.49–9.84%含まれていた.シネフリンは,未熟果皮における‘トークニブ’(C. nobilis Lour.)で 8.97 mg・gDW−1 と最も高く,ついで‘イズミベニ’(C. tangerina hort. ex Tanaka)が 7.03 mg・gDW−1,‘大宜味クガニー’5.17 mg・gDW−1 の順であった.フラボイド類の PMFs は未熟果皮の‘大宜味クガニー’で 20.62 mg・gDW−1,‘カブチー’20.66 mg・gDW−1,‘オートー’(C. oto hort. ex Yu. Tanaka)12.52 mg・gDW−1,また主要栽培種のタンカン‘T-132’(C. tankan Hayata)にも 18.95 mg・gDW−1 含まれており,それぞれ固有のフラボノイドプロファイルを示した.これらの結果から,特に生産量の多いシィクワーサーとタンカンの加工残渣,摘果果実といった未利用廃棄物を有効利用できる可能性が示唆された.