著者
稲葉(伊東) 靖子 齋藤 茂
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.841-849, 2008-12-01 (Released:2011-06-06)
参考文献数
30

脱共役タンパク質UCPは6回膜貫通型のミトコンドリアキャリアタンパク質で,動植物に広く保存されている.哺乳動物の褐色脂肪細胞では,膜内外に形成されたプロトン濃度勾配エネルギーをUCP1が積極的に解消することにより非震え熱産生が誘導される.ここ数年,UCP1遺伝子の進化に関する研究が進展し,脊椎動物の系統においてUCP1遺伝子の発熱性の機能が獲得された進化過程が明らかになりつつある.一方,熱産生における植物UCPの役割は不明な点が多いが,発熱植物のミトコンドリアにはUCPが豊富に含まれており,熱産生との関わりが注目されている.ここでは著者らの研究を中心に,熱産生における動植物UCPの役割と適応進化による発熱機能獲得の経緯について概説する.