著者
立川 泰史
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.32, pp.267-279, 2011-03-20

本稿は,造形活動における子どもの意味生成過程に働く「差異」に注目し,「意味」が生成する場面の内実を探りながら実践的課題を明らかにしようとするものである。ここでは,M.バフチンの対話論をG.ドゥルーズらの現代思想へと読み広げるやまだようこの「生成的網目モデル」の視点を援用し,異学年における「差異」の意識調査や造形活動にあたる子どもの会話分析を中心に考察した。それによって,子どもの「差異」の意識は,「意味づくり」と深い関係があるが,その捉えに学年間で違いがみられること,また,対話による意味生成過程が示す多声的性格,身体的な側面や「差異」の働き,「表現」との偶有的関係など,いくつかの特性と実践的課題が明らかになった。