著者
竹内 竜雄
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学会雑誌 (ISSN:00093459)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.584-588, 1970-03

神経症〜境界例レベルの離人症患者15名を対象としてロールシャッハ・テストを行なった。形式分析では反応領域でDm%が高いこと,内向的体験型が大部分を占めていること,運動反応中mの割合が高いこと,形態水準が低いこと,FCに比べCF+Cが多いことなどが特徴的であった。内容分析では主題分析で口愛期的傾向,超自我葛藤および同一化葛藤がめだち,Barrier ScoreとPenetration Scoreでは後者が著しく多く,防衛解釈では分離退行,知性化および合理化の機制がめだった。以上を検討した結果,離人症の精神力動の特徴として,強い口愛期的依存傾向,併存する懲罰的超自我,同一化葛藤および自我分裂,これらをめぐって対象関係の発達の障害に基づく知覚と認識の機能の病態化,ことにその基盤であるself-feelingの不安定さなどが認められ,これらの基本的な精神病理が離人症の症状形成をなしている経緯が明らかとなった。