著者
脇 賢羽 竹本 怜将
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.104-107, 2021-02-01 (Released:2022-02-01)

各地にある醤油醸造業は,地域ごとに独特の味や風合いなどを生み出す地域の特色ある食文化を担っている.しかし塩分濃度が高いことに加え廃液の処理の問題により年々醤油醸造業は減少してきている.そこで,われわれは長年研究を行ってきた淡水性ユーグレナによる廃しょうゆ処理を試みた.ユーグレナの培養実験ならびに培養したユーグレナの二枚貝の育種実験等を行った.その結果,ユーグレナが高塩分濃度で培養可能であることを明らかにした.また,廃しょうゆ処理で必要となる希釈水量の削減にもつながることを見いだした.さらに,希釈した廃しょうゆで培養したユーグレナを餌として与える二段階処理実験では,醤油の色調が茶褐色からほとんど透明に脱色できるとともに,アサリの旨味成分が増加するなど想定外の成果も得られた.このような研究結果を活かすことで,廃しょうゆ処理の経費削減およびアサリなどの餌を目的としたユーグレナの新たな利用方法を見込める可能性がある.