著者
竹村 亜紀子
出版者
国立国語研究所
雑誌
国立国語研究所論集 (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.103-116, 2012-05

本稿は親の母方言の影響によって鹿児島方言の習得が異なることを報告する。親が体系を異にする方言を母方言とする場合,その子供は方言接触の環境で育っているといえよう。本研究は鹿児島方言を対象に,方言接触がない環境(両親ともに鹿児島方言話者)で育った話者と方言接触の環境で育った話者(片/両親が非鹿児島方言話者)の方言習得の違いを捉えることを目的とする。本研究が行った調査の結果,(1)両親の出身地による方言習得の違いがあること,(2)方言接触がない環境(両親ともに鹿児島方言話者)で育った話者は文法的な要素(音韻規則)は変化しにくく,(3)方言接触の環境で育った話者(片/両親が非鹿児島方言話者)は伝統的な文法的要素の習得が不完全であるために文法的な要素(音韻規則)自体が異なっていることが明らかになった。また方言接触の環境で育った話者は鹿児島方言らしく聞こえるような疑似的な鹿児島方言が多く観察されることも明らかとなった。