著者
笠川 浩子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.293-300, 1963-08-01 (Released:2010-07-21)
参考文献数
15

体内汚染に着目した放射線管理の観点から重要な尿中の全放射能測定方法のうち, 塩基性リン酸塩沈殿への共沈を利用する方法をとりあげ, 実際の管理業務として用いる観点から, 人間の尿を使用し, 種々の問題点を検討した。検討事項はつぎのとおりである。a.尿中放射性物質の回収率に対する尿の個体差の影響, および同一尿における種々の核種の回収率の差。b.操作簡易化のために各検体に加えるNaOH量を一定にすることの可否。c.採尿後, 検査までの放置時間の回収率への影響の有無。d.放射性物質の回収率を左右すると考えられる因子についての考察。著者が試みたいくつかの実験結果から塩基性リン酸塩沈殿への共沈を利用する方法は, (a) 比較的短時間で結果が得られること。 (b) 特殊な技術, 器具および試薬などを必要としないこと。などの利点を備えているが, 実施にさいし (a) 回収率が尿の個体差の影響を受けること。 (b) 回収率が最高となるNaOH添加量を正確に定めがたく, 操作簡易化のために, その量をすべての尿に対して一定にし得ないこと。 (c) 採尿後, 検査までの時間に制約があること。 (d) すべての核種に対して回収率が等しくないこと。などの点を配慮する必要があると考えられる。