著者
水上 博喜 吉澤 康男 笹屋 昌示 根本 洋 佐々木 純 葛目 正央 成原 健太郎 真田 裕
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.669-672, 2006-07-31 (Released:2010-09-24)
参考文献数
10
被引用文献数
4

症例は74歳, 男性. 腹痛の増悪を主訴に当院を受診し, 右上腹部の圧痛, 軽度の反跳痛を認めたが, 血液検査ならびに画像検査上明らかな異常所見はみられず, 急性腹症の診断で経過観察入院となった. 入院後, 腹痛の増強, 腹部膨満が出現し, 2日後の血液検査所見より膵炎による腹膜炎が疑われた. 腹部造影CT所見では, 膵臓には異常がなく, 右上腹部に腹水の貯留が出現していた. 診断目的に腹水穿刺を行い, 胆汁様腹水が採取されたため, 胆汁性腹膜炎と診断して緊急手術が行われた. 開腹所見では, 胆嚢体部肝床部側に穿孔を認めたが結石はなく, 術中胆管造影造影検査でも, 総胆管結石や走行異常はみられず, 胆嚢摘出術と腹腔ドレナージを行った. 病理組織学的検査では, 胆嚢は穿孔部を除き, 粘膜構造は正常であり, 穿孔部周囲の血管に血栓などの病変は存在せず, 特発性胆嚢穿孔と診断された. 腹水の細菌培養検査も陰性であった.