著者
篠田 健三
出版者
社団法人 東洋音楽学会
雑誌
東洋音楽研究 (ISSN:00393851)
巻号頁・発行日
vol.1965, no.18, pp.176-206, 1965-08-20 (Released:2010-11-30)

芝祐泰採譜「雅楽第二集催馬楽総譜」 (龍吟社、一九五六年) を用いて以下、催馬楽の旋法を考える。まず歌謡旋律の部分のみを対象として分析したい。
著者
篠田 健三
出版者
社団法人 東洋音楽学会
雑誌
東洋音楽研究 (ISSN:00393851)
巻号頁・発行日
vol.1967, no.20, pp.1-28, 1967-12-20 (Released:2010-11-30)

管絃雅楽を対象とした研究は古来かなりの数にのぼっている。新しい研究では、これらの先蹤を是非とも尊重しなければならぬし、なかんずく、いかに限定せられた対象を取扱う場合でも、雅楽の負う歴史的な背景を十分に念頭に置いていなければならない。個々の楽曲についての発生、伝来、編曲、演奏、伝承の歴史を細密に調べることが必要なゆえんである。また、雅楽の音階、旋法等、音楽理論にようて解明さるべきものに対しては、あたかも中世ヨーロッパ教会楽がつとにその理論を整えていたのと同様、古くから相当に整理された理論をもっているのであるから、それらの理論について十分な検討を行ない、もし、不備であるならばただにそれを訂正するのみでなく、いかなる原因で不備な理論が作られかつ信ぜられるに至ったかをも、理論自体の歴史的な伝承の上に即して明らかにしなければならない。また、総じて、現行の演奏をそのまま直ちに雅楽の古姿と同じであると見なすことはできない。その遷移の模様は、古譜の正読、古理論の正解、伝承上の口伝、伝承上の経緯、周辺の諸音楽の理解などの総合知識をもって、雅楽全般、楽曲ごと、さらに、楽曲の個々の部分ごとに細心緻密な検討を行なうことによって解明されなければならない。これらを解明することは、雅楽が単に古くかっ大規模な音楽であったというにとどまらず、また、中絶することなく管絃雅楽の篳篥譜の旋法一 (1) 管絃雅楽の篳篥譜の旋法二今日まで伝承されてきたというばかりでなく、実に日本音楽の中軸をなして現在なお生きていることを証明することであり、さらにまた、世界音楽における東洋の聖典が、今日なお、世界音楽を支える太い支柱であることを証明することにもなるのである。わが国の雅楽と攣生の李王家雅楽が近年絶滅したことは、この意味から、本当に口惜しいといわねばならない。ここでは現行の雅楽譜、すなわち、芝祐泰採譜「雅楽第一集管絃総譜早楽六曲早只拍子一曲」 (竜吟社一九五五) によって、各楽器および各楽曲の旋法を推定してゆきたい。わずか、六調七曲をもって全豹を窺うのはもとより偏狭のおそれなしとしないけれども、公刊の譜ではこれ以上のぞめぬことであるから、さし当っての試みとして調べてみる。したがってここに推定する旋法は、雅楽で用いられる旋法の一部にすぎないであろうし、また、資料の不足によって謬った推定を下しているかも知れない。ただ、今後の研究の参考となれば、それで幸いである。