著者
羽角 和正
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.1328-1338,037, 2003

近年, シェード変動と製品外観に対し, より厳しい品質要求が高まってきており, 製紙業界は品質と効率向上を求めて, カラー変更に要する時間とそれによる損紙発生とを削減する方法を探究してきた。カラー変更の手動制御では変更の複雑さに応じて所要時間が1時間にもなることがある。近年は在庫削減と顧客への迅速納品の要請が強く, 製紙メーカはこれまで一般的であったシェードを徐々に変えていくという贅沢が許されなくなり, 各シェード製造の生産工程を短くせざるを得ず, 難しいシェード変更が頻繁に行われるようになってきた。<BR>加えて, カラー制御のソリューション内容にも進化が見られている。カラー制御の新しいアプリケーションとして蛍光増白剤の存在下でのカラー制御が可能となり, 染料効率の変化と損紙によるカラーの乱れを把握出来るようになり, 紙の表裏差を処理できるようになった。また, 同一グレード内のシェード安定性の向上を目的とする制御ストファンにも前進が見られた。こうした新しい制御技術により, 応答性に優れ, かつ色座標をこれまでになくターゲットに近く保つことの出来る堅牢なモデルが実現されるに至った。<BR>イギリスにおいて弊社の次世代カラー制御システムについて, 四工場 (ファインペーパー抄紙機2台と新聞用紙抄紙機2台) で試験評価を実施した。その結果, 上質ファインペーパー抄紙機ではシェード変動が30%削減され, カラーチェンジ時間が50%削減された。再生新聞用紙抄紙機ではデルタE変動が45%劇減され, その結果シェード変動は肉眼で識別できないまでに改善された。<BR>この新しい劉御システムには, 多変数スーバーバイザリ・カラー制御機能, 染料ゲインの自動決定機能, 染料効率の補償機能, 染料レシオのマスター/スレーブ制御機能, カラー変更の自動制御機能等が備わっている。本報では, 次世代カラー制御システムの機能とその結果について紹介したい。