著者
船戸 康幸 高木 望 虫明 基 久保田 雄輔 赤石 憲也 長嶋 孝好
出版者
鈴鹿工業高等専門学校
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

1.LaB6陰極を用いたスパッタイオンポンプ構造の追求。ポンプ真空容器としては、直径6インチ、長さ200mmのSUS-304製とし、平行平板およびペニング型放電電極を設置した。陰極として厚さ5mm、直径50mmのLaB6円板を使用した。この形状でのグロー放電プラズマスパッタにより、容器壁にボロン系薄膜を形成し、水を主体とする排気実験を行った。測定系として、超高真空電離真空計、マスフィルタ型分圧計、ピラニ真空系を接続する。粗引きポンプで排気したあと、LaB6スパッタ放電を開始する。このときの放電パラメータと排気特性(Pump-Down特性、排気速度特性、分圧特性、)の相関について詳細実験を行った。その結果、ボロン及びLaB6膜の水に対する高排気速度の実験的検証を得た。:2.プラズマパラメータと排気特性の相関関係の測定。グロー放電プラズマの電子密度、電子温度、空間電位の測定を、ラングミュアプローブを用いて行った。その結果スパッタ放電とポンプ排気特性の関連が明白となり、さらに高効率の排気を得るための条件を追求した。ペニング型放電電極構造の基礎実験を行い、磁場の印可が有効であることの検証をした。放電途中のガス放出・吸収挙動を四重極質量分析計と作動差動排気システムとの組み合わせによって詳細実験を行い、本研究の主目的を検証した。:3.ボロン系薄膜の物性評価。生成薄膜の評価をX線光電子分光法を用いて行った。スパッタターゲット材料の分析およびサンプル片上生成薄膜の組成分析を行い、プラズマパラメータとの関連が明らかとなった。更に、薄膜の深さ分布測定から、酸素、炭素、等、ポンプ特性に重要な影響を与える成分の、膜中分布が理解できた。この結果を、壁とのリサイクリング挙動、気相中での分圧特性、ガス放出特性に関する従来の実験結果、分担者の理論的検討、と比較し、新しいタイプのスパッタイオンポンプの可能性に資する成果を得た。