著者
荒田 弘司 アラタ コウジ Kohji ARATA
雑誌
関西国際大学地域研究所叢書
巻号頁・発行日
vol.1, pp.67-79, 2004-03

企業(営利組織)・組織(非営利組織)は人々の生活や企業・組織の生産に必要な財を提供する役割を担った「社会の公器」である。しかし、最近はアメリカを中心にして、株主価値を最大にする「株主価値経営」が企業経営の基本であると喧伝されている。企業は株主価値を高めるために手段・方法を選ばないで、利益それも短期的な利益を獲得しようとする。そのために企業は安全性や法を軽視して事業を運営し、多くの事故や不祥事が発生し、信用を失い、経営破綻に追い込まれることもある。こんな時にこそ、企業・組織は社会における企業・組織本来の役割を正しく認識する必要がある。その基本は「株主価値経営」ではなく、多くの企業関係者が参画して「企業関係者経営」を推進し、多くの企業関係者の満足に貢献することにある。わが国には時代や業種を超えて事業運営の手本とすべき江戸時代の商家の家訓がある。本稿は商家の家訓に学びつつ、「企業関係者経営」に立脚して時代の要請に即した「経営理念」をまとめてみた。