著者
菅原 桂
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.88-92, 2010-02-01 (Released:2011-08-12)
参考文献数
15

我が国は高齢化社会を迎えて「より善く生きる」ことが社会的な課題となっている.運動器疾患はそれ自体が生命を脅かすことは少ないが,その予防と治療は QOL (Quality of Life) の観点から非常に重要である.膝や肘などの関節に存在し四肢の動きを滑らかにしている関節軟骨は,いったん損傷を受けると自然には治癒しない組織である.そのため,根本的な治療ができず,次第に軟骨が変性して痛みを生じるようになり,日常生活に支障をきたすことも多い.このような軟骨欠損の治療法として,組織工学を応用した自家培養軟骨移植術が登場した.ここでは,軟骨組織の特性と,自家培養軟骨による軟骨欠損の治療およびその産業化への取り組みについて解説する.