- 著者
-
蔡 珮菁
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, no.3, pp.17-32, 2007-07-01 (Released:2017-07-28)
「長期的な観点」に対する「長期的観点」のように,「連語」と交替可能な「臨時的な複合語」について,その語構成レベルの成立条件を解明すべく,"接尾辞「的」による派生形容動詞(「A的」)と名詞(「B」)との結びつき"に注目して,要素「A」「B」がその語種・品詞性においてどのようなくみあわせのとき,臨時的な複合語「A的B」になりやすいかを検討した。新聞の社説本文3年分における(交替可能な)「A的なB」「A的B」の使用状況を計量的に調査した結果,「A的B」が最も活発に成立するのは,「A」「B」がともに2字漢語の(非用言的な)体言類というくみあわせであること,また,このくみあわせは,4字漢語複合名詞や和語複合名詞の構成において最も優勢なくみあわせに一致・対応することが明らかとなった。このことから,連語と交替可能な臨時的複合語の成立にも,既存の(固定的な)複合語の構成のあり方が影響を与えていること,すなわち,要素のくみあわせが,既存の語構成において安定的・生産的なタイプに一致・対応するものほど,臨時的な複合語として成立しやすいのではないかとの見通しを得た。