著者
藪内 弘昭 林 知仁 藤原 麻紀子 大楠 剛司 森 めぐみ 宮井 一行
雑誌
日本薬学会第142年会(名古屋)
巻号頁・発行日
2022-02-01

【背景・目的】 発表者らは、これまでの研究において、文献情報を人工知能に学習させ、植物抽出物の生物活性を予測する手法を開発してきた。当研究では、当該手法を用いて抗菌活性を持つ植物抽出物のスクリーニングを実施し、そこから選抜したシロモジ精油の成分分析及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を評価した。【方法】 既報(藪内ら 平成30年度和歌山県工業技術センター研究報告 2019)の手法に準じて、植物抽出物の抗菌作用に関する先行文献データを人工知能に入力し、各植物抽出物について抗菌活性の有無を学習させた後、NCBI Taxonomy収載の植物に対し、抗菌活性の予測を行った。 予測に基づき選抜したシロモジ(Lindera triloba)を2021年9月に和歌山県内で採取し、葉及び枝それぞれについて、乾燥、粉砕した後、水蒸気蒸留により精油を抽出した。得られた精油の組成は、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)により推定した。また、各精油について、微量液体希釈法により黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。【結果・考察】 発表者らの手法を用いて植物抽出物の抗菌活性についてスクリーニングを実施したところ、候補の一つとして、日本固有種であるシロモジ(クスノキ科クロモジ属)の抽出物が選抜された。 GC-MS分析の結果、シロモジの葉の精油には、δ-カジネン、α-カジノール及びβ-カリオフィレンが、枝の精油には、α-カジノール、カンファー、リモネン、酢酸ボルニル及びδ-カジネンが、主に含まれると推定された。これらのうち、δ-カジネン、α-カジノール及びリモネンについて、抗菌作用を有することが文献で報告されている。 また、抗菌試験の結果、シロモジの葉及び枝の精油のMICは、それぞれ4 mg/mL及び1 mg/mLであり、シロモジの葉及び枝の精油は、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を示した。