著者
藤岡 芳由紀
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.1148-1154, 2013-10-01
参考文献数
2

昨今の節電意識の高まりにより,空調費削減に寄与する省エネ機能を前面に押し出した機能性塗料の需要が伸びてきている。機能性塗料の代表的なものとしては遮熱塗料(高日射反射率塗料)と呼ばれているものがあり,省エネ意識の高まりを追い風に年率20%台の伸長を続けている。ただし,反射依存型塗料の遮熱塗料では大気や雨水に含まれる汚体(黄砂,煤塵,車塵等の堆積物)がもたらす塗布面の汚れにより効果が持続しないという問題点がある。<BR>本稿では反射依存型塗料の問題点を解決する画期的な次世代塗料「熱交換塗料ネオコート」の紹介をより充実させた。加えて,節電効果の検証結果に関し,数種の実例を挙げて具体的に説明した。<BR>「熱交換塗料ネオコート」の熱遮蔽の特徴は,「塗面による熱の反射」ではなく「塗面による熱の取り込み」で「特定温度内で熱エネルギーに対し反応する」という物理的な特性を巧みに利用したもので,反射効果や断熱効果に依存する事無く「熱の遮蔽」を成し遂げている。<BR>その主な特徴としては,<BR>1)ヒートアイランド対策~反射に依存しないため輻射熱などの熱害を防止<BR>2)塗布面に汚れが付着しても効果に影響がない<BR>3)太陽光に依存しないため熱帯夜など夜間でも効果を発揮<BR>4)冬場は熱を取り入れ暖房効率アップ<BR>などが挙げられる。<BR>地球規模で環境が悪化して行く中,「新世代塗料」としての期待に応えるべく,「熱を消す」という「熱交換塗料ネオコート」の独自のテクノロジーは,従来の機能性塗料の常識をくつがえしただけでなく,塗料を使った「遮熱」「断熱」における方法論の見直しと,最新技術による新しい時代の幕開けを告げていると言える。