著者
藤川 愛咲子 竹尾 直子 中田 京子 安西 三郎 福田 晴香 岡田 憲広 竹中 隆一 坂本 照夫 米津 圭佑 油布 邦夫 波多野 豊
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.99-102, 2020-04-01 (Released:2020-06-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

山間部在住の 74 歳,男性。猟犬の飼育歴があり,獣肉アレルギーの既往はない。1 年前,鼠径部のマダニ刺症後に鼠径から大腿部にかけて瘙痒性皮疹を生じ,マダニ脱落後に自然消退した。4 月,草刈り後に下肢に瘙痒性皮疹が出現し全身性に拡大した。腹部にマダニを発見し,自己除去した直後に呼吸困難感,胸痛が出現し救急搬送された。1 カ月後,陰囊部の瘙痒を自覚し同部にマダニを発見し,搔破にてマダニが脱落した直後に全身性の瘙痒,呼吸困難,胸痛を自覚した。Galactose-α-1,3-galactos(eα-Gal)特異的 IgE 抗体は class 2 であり,いずれのエピソードもマダニアナフィラキシーと診断された。自験例は自己除去や搔破などのマダニへの刺激により,唾液中の α-Gal が大量に皮内に注入されたことで発症したと考えられ,マダニアナフィラキシーの既往のある患者にはマダニ刺症時にマダニを指でつまむ,引っ張るなどの刺激を加えないことの啓発が必要と思われた。