1 0 0 0 OA 衆芳軒隨筆

著者
蘭山 [著]
巻号頁・発行日
1788

天明8年(1788)1月30日の京都大火で、小野蘭山(1729-1810)は私塾の衆芳軒を失って門人吉田立仙宅に仮寓した。講述もできず、小閑を得た蘭山は、同年11月10日に『衆芳軒随筆』を起筆し、ついで『水火魚禽考書』(当館請求記号:W391-N28。鉛筆書きの写し。原本は東洋文庫蔵)、『南楼随筆』(当館請求記号:W391-N29。写本。原本は東洋文庫蔵)と書き継ぎ、年末に筆を置く。この3点の随筆で、蘭山は計32件の博物誌小論を残した。『衆芳軒随筆』の「鵊ノ鳥」(雷鳥)には、「余嘗テ白立ノ両岳ニ遊シ」の文があり、蘭山は白山・立山に採薬したことがあるらしい。『水火魚禽考書』の「薬石」には弟子たちへの批判があり、『南楼随筆』には「ウキキ」(マンボウの捕獲記録7件を体の計測値ともに記す)、「ウミヘチマ」(海綿の諸方言)、「シハヒトデ」(クモヒトデ類テヅルモヅルの諸方言)、「海胆」(ウニの諸方言)など、見逃せない記事が多い。(磯野直秀)