著者
蟹江 春雄
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
消化器病学
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.455-479, 1938

余ハ前編ニ於テ肺結核患者ノ糞便中ノ結核菌ニ就キ, 染色法及ビ培養法ヲ併用シテ檢索ヲ試ミ, 開放性肺結核ニ於テハ殆ドソノ全例ニ, 又閉塞性肺結核ニ於テモ瘻々糞便中ニ結核菌ヲ證明シ得ルモノナルヲ實驗セリ.而シテ糞便中ノ結核菌ノ由來ニ關シテハ, 之ガ腸ノ結核性病竈ヨリ排菌セラヲ、モノノ外, 主トシテ喀療ノ嚥下ニヨヲモノナラント結論シタリ.<BR>茲ニ余ハ更ニ研究ヲ進メテ胃液中ノ結核菌ニ就キ培養法竝ビニ染色法ヲ併用シテ菌檢索ヲ施行シ, 且胃液酸度ガ結骸菌ニ及ボス影響ニ就イテモ觀察セリ.<BR>培養基ハ鈴木氏銀杏鶏卵培地ヲ改良シテ, 培養基製作時ノ加熱温度ノ變更ト, 「ベリベロール」ノ添加トニヨリ, 結該菌ノ發育促進ト檢出率ノ増加トヲ計レリ.又集菌法ハ主トシテ「アンチフォルミン」硫酸法 (1%) ニヨリ, 且小川氏ノ「トリパフラビン」硫酸法及ビ「アンチフォルミン」法ヲ併用セリ.<BR>胃液ハ早朝空腹時ニ, 前液1時間及ビ2時間胃液ヲ分劃的ニ探取シテ, ソノ各々ニ就キ結核菌檢査テ施行シタリ.ソノ成績次ノ如シ.<BR>胃液前液ニ於ケル結核菌ノ培養成績ハ, 閉塞性肺結核28例中9例 (32.1%), 開放性肺結核72例中69例 (95.8%) ノ陽性率ヲ得タリ.又染色法ニヨリテハ閉塞性7例 (25%), 開放性66例 (912%) ニ陽性ナリ.<BR>1時間胃液ニ於ケヲ培養成續ハ, 閉塞性患者ニ5例 (17.9%), 開放性患者ニ54例 (75%) 陽性ニシテ, 染色試驗ニヨリテメ閉塞控3例 (10.7%), 開放性50例 (69.4%) ニ陽性ナリ.<BR>2時間胃液ニ於ケヲ培養成績ハ閉塞性患者中ヨリ5例 (17.9%), 開放性患者中ヨリ51例 (70.8%) 陽性ニシテ, 染色法ニヨリテハ前者4例 (14.3%), 後者50例 (69.4%) ニ陽性ナリ.<BR>胃液酸度ノ結核菌ニ及ボス影響ニ就イテハ, 正常酸度・過酸症・減酸症及ビ無酸症ノ間ニ結核菌培養成績ニ差異ヲ認メズ.<BR>又胃液中ニ發見セラヲ丶結核菌ノ數ハ略々喀痰中ノ結核菌ノ多寡ニ比例シテ増減スルモノナルヲ認メタリ.<BR>以上ノ結果ヨリ胃液中ニ發見セラル、結核菌ハ, 主トシテ喀痰ノ嚥下ニ基因スルモノト見做シ得ベシ.