著者
西山 慧子 伊藤 貴之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.106-116, 2007 (Released:2008-05-27)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

遺伝子ネットワークとは,各遺伝子をノードとし,遺伝子間をエッジで接続して構築されるデータである.数千,数万といった大量の遺伝子群で構成される遺伝子ネットワークには,複雑な連結成分を含むことが多く,その解釈や把握が困難な場合も多い.本論文では,遺伝子群にクラスタリングとネットワーク化を同時に適用して構築される,階層型ネットワークデータを対象とした可視化手法を提案する.提案手法では,各々の遺伝子は数種類の発現率を持つと仮定し,その発現率の相関性の高さによりクラスタリングを行う.それと同時に提案手法では,発現率の相関性が高い遺伝子間をエッジで連結することにより,ネットワークデータも同時に生成する.提案手法ではこの遺伝子ネットワークデータを,大規模階層型データ可視化手法「平安京ビュー」の拡張手法を用いて可視化する.提案手法を用いることにより,遺伝子学の研究者は,膨大な遺伝子群の中から,特定の遺伝子の相互関係を分析,あるいは興味深い特徴を持つ遺伝子の発見,などが容易になるものと考えられる.なお本論文は遺伝子ネットワークの可視化を試みるものであるが,提案手法における階層型ネットワークデータの可視化手法は,拡大性とランダム性の高い複雑ネットワークと呼ばれるネットワーク全般に適用可能な,応用範囲の広い可視化手法である.