著者
西村 愛子 浅井 元朗
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.52-59, 2012 (Released:2014-01-08)
参考文献数
14

農耕地における雑草の発生状況を定量化するためには,植生調査が有用である。既存の手法では効率性に乏しいため,雑草管理の現場ではより短時間で簡易的に行える手法が望ましい。本研究では,従来からある植生調査法を改良した簡易法を提案し,既存の目視法と比較することにより,調査精度と効率性,データの再現性について検討した。作物収穫後の圃場に不耕起刈取り区および耕起放任区を設け,簡易法と目視法による植生調査を行った。測定された被度や出現種の順位は手法間において高い相関を示し,種の検出力は低かった一方で,既存の植生調査法と比較して上位優占種について概ね同程度の調査精度を得ることができた。データの再現性指標として用いられる級内相関係数(ICC)を計算したところ,簡易法による調査結果は,39名の観測者間で高い再現性(ICC = 0.8)を示した。また,簡易法では,上位出現種の構造について,およそ1/5の所要時間で従来の手法と同程度の調査精度を得ることが可能であった。以上の結果から,簡易法による雑草発生量の定量化は,精度や再現性が高く,農耕地における雑草発生量の定量化に有効かつ効率的であることが示された。