著者
杉本 治良 城戸 一哉 今村 一輝 蒲生 松助 西窪 靖和 村上 満彦
出版者
関西医科大学医学会
雑誌
関西医科大学雑誌 (ISSN:00228400)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.179-187, 1973-06-20 (Released:2013-02-19)
参考文献数
11

従来細胞膜の興奮はNaイオンの細胞への流入によつて始ると主張するナトリウム説で説明されてきたが,その後,外液のCaイオンが内向電流の担体であるとするカルシウム説を主張する一派があり,今日ではこれが一般に受け入れられているようである.しかしわたくしたちは,モルモット輸精管の摘出標本を等張蕉糖液申に置いた場合,少量の塩化カリウムによつて収縮が起ることを見出した.この現象は,外液中にCaイオンが全くなく,Naイオンも極めて少い状態で現われたので,この収縮過程にKイオンが主たる役割を果していると考えられた.また同時に行われた案験でCaイオンあるいはNaイオンはいかなる濃度においてもこの標本に収縮を来たすことがなく.またある一定濃度以上外液中に存在する場合には,かえつて上述のKイオンによる収縮を抑制することが見出された.このような実験的事実は,平滑筋収縮について従来用いられてきた概念では直ちに解釈できなかつたので,これに関連した実験もあわせて行い報告したい.