著者
西部 義久 永野 篤弘 上嶋 康秀
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.45, no.Supplement1, pp.46-49, 2002-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
6

点鼻製剤は, 鼻腔局所で作用する薬物のみならず, 全身作用を目的とする薬物においても, 経口・注射に代わる投与経路として期待されている。しかしながら, 線毛運動等のクリアランス機構によって, 製剤の鼻腔内滞留時間は制限を受け, より効率的なデリバリー達成のためには薬物浸透性の向上が必要とされる。薬物浸透性を向上させる方法として, 吸収促進剤の添加, 粘膜付着性高分子の添加さらには粉剤化などが報告されている。今回, これらに代わる新規な薬物浸透性改善法を検討した結果, 懸濁製剤の浸透圧を低く調整することにより, 薬物浸透性が劇的に向上することを見出した。ウサギを用いたフルオレセイン経鼻吸収試験において懸濁製剤の低浸透圧化によりフルオレセインの生物学的利用率が顕著に向上した。懸濁製剤の低浸透圧化による薬物浸透性向上は, 吸収促進剤を一切使用しない, 安全な新規点鼻製剤技術としてその有用性が期待される。