著者
角藤 裕 清水 元気 山岡 傳一郎
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.161-167, 2018 (Released:2018-11-08)
参考文献数
8
被引用文献数
3 3

持続する吃逆は患者のQuality of Life を大きく損なうため速やかな治療が求められるが,時に治療に難渋する。 当院では,吃逆の治療に柿蔕湯を日常的に用いており効果を実感しているがその有効率についてのデータは無いままであった。そこで2014年2月1日~2016年2月28日までの25ヵ月間に,吃逆を主訴として当院漢方内科を受診し,第一選択薬として柿蔕湯が処方された患者について,カルテを後方視的に調査し検討した。対象患者は27名(女性3名),年齢65.4±15.1歳(24~89歳)であった。対象者の59.3%で奏効し,症状軽快例を含め全体の66.7%に効果が認められた。投与後2日以内に効果を確認できる例が多く,有効例の88.9%が投与開始4日以内に効果を確認できた。証によらず病名処方的に投与を行った例も多くあったにも関わらず有効率が高く,臨床的に非常に重要と考えられた。
著者
角藤 裕 清水 元気 山岡 傳一郎
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.337-341, 2015 (Released:2016-02-09)
参考文献数
13

B 型肝炎に伴う非代償性肝硬変により生じた治療抵抗性の腹水に対し茵蔯蒿湯と五苓散料が奏効した一例を経験した。症例は58歳女性。B 型慢性肝炎と糖尿病を無治療で放置しており,外傷に伴う頸部痛で受診した際に黄疸と腹水を指摘され入院した。フロセミドやスピロノラクトンといった利尿薬の効果に乏しく,アルブミン補充でも腹水のコントロールが不良であったが,茵蔯蒿湯合五苓散料を煎薬にて投与したところ1ヵ月余りの間に速やかに改善した。茵蔯五苓散料(煎薬)あるいは五苓散エキスと比較し明らかに効果があったと思われ,特に山梔子や大黄の作用が重要であったと考えられた。