著者
大内田 昭信 谷口 明美 河内 泰英 前田 泰宏 樫原 昭裕 大前 重男
出版者
The Japanese Society of Toxicology
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.19, no.SupplementII, pp.263-280, 1994-10-15 (Released:2008-02-21)
参考文献数
17

TAZ/PIPCの安全性試験の一環として, tazobactam(TAZ), piperacillin(PIPC)およびそれらの配合剤(TAZ/PIPC)について変異原性の有無を検討するために, 細菌を用いた復帰突然変異試験, 培養細胞を用いた染色体異常試験およびICR雄マウスを用いた小核試験を実施した。1. TAZ, PIPCおよびTAZ/PIPCの復帰突然変異試験ではS. typhimurium TA100, TA98, TA1535, TA1537, およびE. coli WP2uvrAを用いて, 抗菌作用が認められる用量を最高に以下公比2~2.5で減じた7段階の用量で実施した。TAZ, PIPCおよびTAZ/PIPCは代謝活性化の有無にかかわらず, いずれの菌株も溶媒対照群と比較して復帰変異コロニー数の用量に依存した明らかな増加は認められなかった。2. TAZ, PIPCおよびTAZ/PIPCの染色体異常試験では培養細胞CHLを用い, 直接法および代謝活性化法の両法において10mMを最高に以下公比2で減じた3~4用量の処理群について染色体標本を観察した。TAZ, PIPCおよびTAZ/PIPCは直接法および代謝活性化法のいずれにおいても染色体の構造異常あるいは数的異常の出現頻度は0~3.0%で, 溶媒対照群と差がなかった。3. TAZおよびTAZ/PIPCの小核試験では625, 1250, 2500, 5000 mg/kgの投与用量で, PIPCでは625, 1250, 2500 mg/kgの投与用量で実施した。TAZ, PIPCおよびTAZ/PIPCにおけるMNPCEの出現率はそれぞれ0.02~0.17%, 0.02~0.1%および0.03~0.07%であり, 用量依存性はみられなかった。また, 背景データを用いた判定法でも陰性であった。4. 上記の結果より, TAZ, PIPCおよびTAZ/PIPCには変異原性は認められなかった。