著者
杉谷 繁樹 野口 耕司 松下 睦 下地 昭昌 柴田 博次 赤星 義彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.987-989, 1989-08-25

抄録:22歳男子で両側性に長母趾屈筋腱腱鞘炎があり,右側は狭窄性腱鞘炎が著明で疼痛を伴った弾撥現象及びlockingを生じたため腰麻下に腱鞘切開術を施行して良好な結果を得られた.手術時所見は他の報告例のほとんどが示すように,踵骨載距突起下の線維性pulley内で腱は著明に変性して紡錘状に肥大しており,これが弾撥現象の原因と推察された.また変性部位には比較的新しいと思われる縦断裂を認めた.この弾撥現象は14歳頃に発現しており,この発生機転には明らかにスポーツの関与(短距離走)が考えられ,長母趾屈筋腱が繰り返しbowstringの作用を受けたため腱の変性を生じたものと推察される.主にクラシックバレエによる障害として同様の報告が散見されるが,他のスポーツを含めて一種のスポーツ障害として本障害を念頭に置く必要があろう.