著者
中島 民恵子 遠山(金本) 伊津子
巻号頁・発行日
vol.142, pp.145-154, 2020-03-31

本研究の目的はニューヨーク近郊の日本人・日系人における在宅介護ニーズの現状と課題を明らかにすることである.ニューヨーク近郊に居住する日本人・日系人2,057 名を対象としたアンケート調査(回収数:611,回収率:29.7%)を実施した.そのうち,本研究の目的と合致し,関連する変数に欠損値のない372 人を分析対象とした. 「在宅でホームヘルスエイドを利用しながら生活したい人」の割合が約30%であり,そのうちホームヘルスエイドへの希望の約40%が「日本人・日本文化を理解する人」であった.また,調査時点で実際に支援が必要な人の割合は約11%であり,多くは配偶者や子どもが支援を担っていることが明らかとなった.今後,生涯未婚の単身高齢者の増加や死別などで配偶者などから支援を受けられない高齢者の割合も多くなり,在宅介護をホームヘルスエイドに求める割合もさらに増加すると考えられる.しかし日本人・日系人はアメリカ社会ではマイノリティであり,希望するホームヘルスエイドの確保は容易ではないことも予測される.日本人・日系人を基盤としたコミュニティにおいて,ニーズにそった仕組みづくりが今後より一層求められる.