著者
遠藤 大輔 及川 哲郎 花輪 壽彦 小田口 浩
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.108-114, 2020 (Released:2020-12-07)
参考文献数
50

北里大学東洋医学総合研究所において初診時に四逆散(四逆散料または四逆散エキス)を処方された患者86名のうち,有効であったと判断した41症例について後方視的に診療録の調査を行った。古典では胸脇苦満と腹直筋攣急の腹診所見や四肢の冷えの存在が重要視されている。我々の検討においても,胸脇苦満は90%以上,腹直筋攣急は60%以上の患者に認め,四逆散処方の根拠として重要視されていることが確認できた。一方で冷えの存在については,過半数の患者が自覚的な冷えを訴えているものの,他覚的所見として担当医が冷えの存在を診療録に記載しているのは約20%に過ぎなかった。従来,処方名にある四肢の冷えが重要と考えられてきたが,今回の検討では診察上冷えの所見を認めなくとも本方は応用されていることが明らかとなった。