- 著者
-
遠藤 朱美
- 出版者
- 北海道大学
- 巻号頁・発行日
- 2021-03-25
目的 本研究では介護保険施設入所要介護高齢者の1年間の体重減少と食形態の変化との関連を明らかにすることを目的とした.方法 2018年度,2019年度の2回の調査に参加した日本の25の介護保険施設入所要介護高齢者455名を,1回目の調査時に常食を摂取していた284名と嚥下調整食を摂取していた171名に分けた.さらに常食を摂取していた者のうち,1年間の体重減少率が5%以上の80名と5%未満の204名に分けて比較し,体重減少と関連する因子を多変量解析にて検討した.本研究は日本老年歯科医学会の倫理審査委員会の審査承認(2018-1,2019-3),北海道大学大学院歯学研究院臨床・疫学研究倫理審査委員会の審査承認(2020-4)を得て,ヘルシンキ宣言の倫理的原則に従って実施された.結果 1年間の体重減少率が5%以上の群と5%未満の群との単純比較では,ベースライン時の各調査項目で有意差は認められなかった.調査項目別の1年間の変化に関しては5%以上の群は5%未満の群に比べバーセルインデックス(BI)が有意に低下し,常食から嚥下調整食に移行した者の割合が有意に増加していた.5%以上の体重減少の有無を従属変数とした多変量解析ではベースライン時の体重(OR=1.059,95%CI:1.014-1.106;p=0.01),BIの変化量(OR:0.966,95%CI:0.943-0.99;p=0.005)と,常食から嚥下調整食への変化(OR:4.408,95%CI:1.867-10.406;p=0.001)に有意な関連を認めた.結論 本研究によって食形態を維持することが,要介護高齢者の体重減少の抑制につながることが示唆された.これにより要介護高齢者においても食形態の維持,すなわち摂食嚥下機能を維持することの重要性が示された.