著者
重田 守輝
出版者
国際短期大学
雑誌
紀要
巻号頁・発行日
vol.13, pp.103-112, 1998

(1) 1)本件は,平成7年4月23日執行の東村山市議会議員選挙の当選人Aが,住所移転をして,被選挙権喪失をし,それを理由としてされた次点者Bを当選人とする繰上補充(すなわち繰上当選)について,選挙人であるWらが,AはBへの議席譲渡のために住民票を移転したものにすぎず繰上補充の要件はないなどとして,Bの当選の効力を争った事案である。2)Wらは,公職選挙法(以下単に「公選法」という。)206条1項にもとづく異議の申出をしたが,東村山市選挙管理委員会はこれを棄却する決定をした。3)これに対する公選法206条2項にもとづく審査の申立を,東京都選挙管理委員会Yが,棄却の裁決をした。4)そのため,Wらが,公選法207条にもとづいて,右の裁決の取消しを求めて本件訴えを提起したものである。(2) 1)本件選挙は,平成7年5月1日から任期開始となる市議会議員の一般選挙であった。2)A,Bらは,同一政治グループから立候補していたが,Aが4位で当選し,Bは次点であった。3)市選挙管理委員会は,4月24日,当選人の告示を行ったが,Aは,議員としての身分取得前である4月26日,市選挙管理委員会に対して,当選の辞退を申し出たうえで,転出証明書をそえて,松戸市へ転出したため被選挙権を失った旨届け出た。4)そこで,市選挙管理委員会は,公選法99条に従いAが被選挙権の喪失により当選人の資格を失ったと判断し,4月27日,繰上当選決定のための選挙会を翌4月28日午後6時に開催することを決定,告示した。5)しかし,この選挙会は,傍聴人多数による混乱のために当選人の決定ができなかった。6)結局,5月21日開催の継続選挙会において,次点者Bを当選人とすることが決定されて,同日告示された。7)Aの転出先とされた松戸市紙敷の住所はAの父の部下一家が住む社宅であった。8)Aは,5月9日には松戸市松戸のAの父が役員をしている会社の代表者所有のワンルームマンション所在地への転居の届出をした。9)さらに,5月29日には松戸市馬橋の第三者所有の賃貸マンション所在地への転居の届出をした。10)原判決(原審東京高裁平7<行ケ>第242号.平8・12・26判決)は,Aは,現在右マンションを生活の本拠としていると認定している。11)原判決は,Aが東村山市から松戸市への転居の届出をしたのは,次点者であるBを当選させるためのものであることは明らかであると認定した。12)その上で,住所を移転させる強固な目的で,4月26日に松戸市へ転出の届出をし,5月29日に転入手続をとった住所がそのまま現在の生活の本拠となっていることからすると,Aは,4月26日に東村山市から松戸市に生活の本拠を移転したと認めざるを得ないなどと説示して,Wらの請求を棄却した。そこで,Wらから上告された。
著者
重田 守輝
出版者
国際短期大学
雑誌
紀要
巻号頁・発行日
vol.5, pp.15-22, 1990