著者
野屋敷 結 川田 学
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.134, pp.91-116, 2019-06-27

本研究は,複数の転機を持つ若手から中堅の保育者が,なぜ保育という仕事を続けているのか,そこにどのような価値を見出していることが継続と関わっているのかに焦点を当て,社会的・時間的文脈の中でどのように成長してきたのかを,保育者自身の主観的な語りから明らかにすることを目的とした。4名の保育者にライフライン・インタビュー・メソッドを用いたインタビューを実施し,複線径路・等至性モデル(TEM)による分析を行った。結果,協力者の保育者という生き方を続ける理由には個別性があるが,同時に保育者の継続を支えている共通の契機として,「保育に対する正の感情」「保育者周囲の社会的状況」の2点が見出された。また,協力者には保育者を継続する個別的な理由から繋がったそれぞれ異なるキャリア形成が見出され,働く者としての保育者自身の主観次元に基づいた保育者の成長研究の必要性が示唆された。