著者
高見 美保 中筋 美子 野村 陽子
出版者
兵庫県立大学臨床看護研究支援センター
雑誌
Phenomena in Nursing (ISSN:24324914)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.R1-R14, 2018-08-08

【目的】本研究の目的は,「3つの認知症ステージ(軽度~中等度~重度)」に該当する認知症者とその家族および,その者への診療に関わっている医師に対して,認知症ケアに携わる専門職(看護師,介護福祉士)が留意している関わりの特徴を明らかにすることである。【方法】データ収集は医療機関,介護老人保健施設,特別養護老人ホーム・認知症対応型グループホームで行い,看護師13名,介護福祉士9名から,研究目的に沿った聞き取り調査を面談方式で実施した。得られたデータは,内容分析法(content analysis)で分析した。【結果・考察】分析の結果,「認知症のステージが発症~軽度の時期」では,認知症者と家族に起きている状態を丁寧に聴取し,介入すべき時を待つという基本ケアは定着しているが,認知症者の有意義な治療効果を得るための介入は,ケア専門職に留意され難いことが明らかとなった。また,「認知症のステージが中等度の時期」では,行動・心理状況(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)に対するアセスメントとして,認知症者が示す言動から情報収集と検討を繰り返し,症状に隠された「その人」を掘り起していく,という関わりがなされていることが明らかとなった。そして,認知症者への療養環境づくりでは,ケア専門職が,認知症者に家族や医師からの関与を途切れさせない,という人的環境づくりを核に据えたケア環境の調整を実施していることが新たに分かった。さらに「認知症のステージが中等度~重度の時期」では,認知症者の意思をくみ取る努力が続けられ,医師と連携して,認知症者と家族にとって穏やかな最期の時が迎えられるように留意していることが明らかとなった。しかし,療養生活への具体的な意思決定支援や,認知症者の"合併症を予防する"ケアについては,明確に現れなかった。これらのことから,多職種に働きかけて認知症者と家族にとって必要なケアを押し進めていく実行力とマネジメント力を持つことや,認知症者の全般的なフィジカルアセスメントを積極的に行い,認知症者のQOLを低下させない介入を実施することが,今後の認知症ケアの発展に求められることが示唆された。
著者
野村 陽子
出版者
法政大学法学志林協会
雑誌
法學志林 (ISSN:03872874)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.65-115, 2014-03