著者
朴 在國 落合 俊郎 金 美点 金 英美 金 恵理 林 恵卿
出版者
広島大学大学院教育学研究科附属障害児教育実践センター
雑誌
広島大学大学院教育学研究科附属障害児教育実践センター研究紀要 (ISSN:13482645)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-11, 2008-03

本研究は、韓国における障害学生のための教育支援実態及びそのニーズを調査することによって、障害学生の大学生活の問題点を分析し、大学支援サービスの望ましい方向を示すことを目的とする。1995年以後に特殊教育対象者障害者特例入学制度を通じて入学した9大学に在学中の障害学生(n=63)を対象とし、質問紙法によって彼らの大学生活適応のための支援の実態、意識、ニーズ及び改善事項に関して調査し、分析した結果、次のような結論を得た。第1に、障害の程度等にかかわらず、学習活動においてはノートテイク支援、大学生活においては受講申請の事前配慮に対する支援が最も多く行われていることが明らかになった。便宜供与された試験方法.手話通訳、補装具の貸し出しなどの領域では、重度障害(1-3等級)学生が軽度障害(4-6等級)学生より多くの支援が供給されていた。しかし、受講申請など、学生生活全般に渡る支援対策の準備及び優先的受講申請制度導入の必要性を示唆する結果が明らかになった。第2に、学習及び生活に関する障害学生の意識調査では、障害カテゴリーの中では聴覚障害学生が最も困難を感じていた。また、次に視覚障害学生と脳性まひ・肢体不自由学生の順であり、障害の程度別にみると、重度障害学生は軽度障害学生より講義内容、図書館、補償機器など、全般的な領域でより強い困難を感じていた。このような結果は.障害学生の学習及び生活を支援するための積極的なサポート制度の整備、特に聴覚障害学生と重度障害学生のための支援の緊急性を示唆するものである。第3として、障害学生の支援ニーズ及び改善事項では.奨学金支援に対する要求が最も高く、学業に必要な情報交換及び授業上の困難さに対する要求が多く見受けられた。この他にも、聴覚障害学生と視覚障害学生は案内電光板の設置、点字案内標識などの要求が高かった。このような結果は脳性まひ・肢体不自由より聴覚障害学生と視覚障害学生のための施設・設備が相対的に不足していることを示唆する。大学内での聴覚障害学生と視覚障害学生のための施設・設備などの設置が優先的に必要とされていることが明らかになった。