著者
金子 啓二郎
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.697-706, 1979-06-01

新生児の胎生年齢評価法中,信頼度の高いDubowitz法を,低出生体重児を含む日本人新生児に応用して,300例につき,彼等の成績と比較し,さらにその簡略化を試み,以下の結果を得た.1)21項目の評価総点Xと胎齢Y間の回帰方程式はY=0.3012X+22.914(相関係数r=0・9298.延評価回数n=720)で,平均95%信頼限界は±1.98週(初回評価のみ)であった.評価得点と胎齢間の相関度では,神経学的得点(10項目)は体表的(11項目)および総点(21項目)に比し,推計学的に有意に低く,体表的得点と総点間には有意差がなく,また評価時期についても有意差を認めなかった.我々とDubowits et al.の相関係数の比較におては,生後24時間未満の総点間で,後者が有意に高かった.3) 個々の評価項目の得点と胎齢間の相関度は,乳頭形成が最高で,乳腺の大きさ,足底のしわの順であり,項目相互間の交又相関は,前記上位の2項目間が最高であった.4) 300例中201例につ得点の生後日数による影響を,300例以外に評価した80例につき検者間の誤差を検討した.5) 以上の結果より,総点法より"腹位懸垂"を除いた20項目と"耳の形+乳腺の大きさ+足底のしわ"の3項目を,2生日以内 (72時間未満) に評価する法を我々の簡便法とした.後者の回帰直線は,Y=1.5150X+26.130 (r=0.8949・n=481) で,rは総点法よりも有意に低く,回帰曲線に対し平均95%信頼限界は±2.07週 (初回評価のみ)であった.6) Newcastle score (1976) に関する我々の結果によると,上凸の放物線状の回帰曲線に対して,平均95%信頼限界は±2.05週であった.7) 未経験者2人と著者間の誤差については,総点法と20項目法では有意差がなく,高度の2簡便法中Newcastle scoreは評価法を調整して一致化をはかった後も,"皮膚のきめ"の影響から有意差を残したが,我々の3項目法では有意差がなくなった.故に,簡便法では精度の低下よりもむしろ検者間の誤差が問題であり,ルーチンの検査としては検者間での評価方式の一致化が重要である.