著者
金子 大智
出版者
京都大学哲学論叢刊行会
雑誌
哲学論叢 (ISSN:0914143X)
巻号頁・発行日
no.44, pp.52-61, 2017

本稿の目的は、フランスの哲学者アンリ=ルイ・ベルクソン(1859-1941)の「自由」論を特徴づけることである。それは以下の手順で行われる。初めに、ベルクソンの自由論を主題とする二本の論文を取り上げ、ベルクソンの「自由論」の概観を捉える。一方は、ベルクソンが「自由」を主題とした彼の初の主著である『意識に直接与えられたものについての試論』(以下『試論』)を内在的に論じた論文(西山, 2013)である。他方は、『試論』の次の主著である『物質と記憶』での議論を中心に、その次の著作である『創造的進化』までも射程に入れたベルクソンの「自由」論を論じた論文(平井, 2012)である。ベルクソンの各主著の時系列上の順序を経て「自由」論は変遷を遂げているであろうが、『試論』から『創造的進化』に至るまでどのように変遷しているのかという内実を見ることが必要である。西山(2013)においては、『試論』における記述を解釈し、最初期のベルクソンの「自由」論を描出している。『物質と記憶』においては、「過去実在論」という彼独特の形而上学的テーゼにもとづいて哲学史上のハードプロブレムである心身問題の解決が図られたが、そこにおける記憶理論を参照し、『創造的進化』における生命一般の進化の創造性をも射程に入れ、時間と自由の関係を考察したのが平井(2012)である。西山(2013)では『試論』の範囲内での「自由」論が示される。平井(2012)では、『物質と記憶』の記憶理論を軸に『創造的進化』までも踏まえた「自由」論が示されるが、前者における(一つの完結した著作ゆえの)残された問題を後者の自由論によって補完できることが本稿において示される(それは『試論』から『創造的進化』へと至る過程がベルクソンの「自由」論の深化であることが内実を持って示されることでもある)。このような概観をふまえ、ベルクソンの「自由」論のさらなる問題を提示する。