- 著者
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金沢 梢
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.585-587, 2005-07-01
前回までの連載では,私たちのゼミナールで訪問した,バンコクの株式会社立病院や国立マヒドン大学附属熱帯病病院等について紹介してきました.今月号では,タイの公衆衛生省 (MoPH:Ministry of Public Health) について,ご報告させていただきます.MoPH は日本の「厚生労働省」の厚生部門に該当する官庁です.
タイ公衆衛生省 MoPH を訪ねて
バンコク中心部のホテルからタクシーで高速道路を北へ走ることおよそ30分,左手に真っ白な建物群がみえてきました.高速道路から降りて少し行くと,大きなゲートが立ちはだかり,それをくぐると,市内の喧騒とはかけ離れた,広大な大学キャンパスのような景色が広がっていました.美しい緑の芝生の中に,高速道路から見えた白亜の大きな建物が点在しており,そのすべてが MoPH の建物です.
私たちはその中の一つ,疾病管理局(Department of Disease Control)の建物の前で車を降りました.8階建ての建物は北館が疾病管理部,南館が非疾病管理部だけで使われており,前者はマラリア,デング熱,フィラリアの感染症を中心に,後者は心臓発作,タバコ問題,ガン予防,ドラッグ防止,交通事故などを担当しています.
建物の中に入ると,玄関ホールに掲げられた国王の写真が目に留まります.建物の中は,外の暑さとは一変して,開放的な建築構造のため心地良い風が通り抜けていきます.中庭に出ると各階すべてのテラス一面にブーゲンビリアの花が美しく咲いているのがみえます.
1階のエレベーターホールには,マラリアの原虫を運ぶハマダラ蚊(Anopheles)の巨大な模型が二体置かれていました.白黒のボディに毛がボソボソと生えており,長い口針がニョキッとみえます.コイツがマラリアを運んでくるのかと思うとゾッとします.守衛のお兄さんは,突然ドヤドヤと入ってきて,代わるがわるに蚊の模型の前で記念撮影をする騒がしい外国人グループの乱入には何もいわずに,モゾモゾとはにかんでいました.