著者
鈴木 和正
巻号頁・発行日
2017

教員採用試験における教育史関係の問題は,教育哲学・思想関係の問題と同様に,思想家の名前や著作,法令名などの細かい知識を暗記して問うものが目立つ。採用試験にまったく関知しない教職専門科目を維持することは,多くの大学(特に教員養成を重要視する大学)において容易なことではない。今,教育史は,実践的指導力を育成する「大学における教員養成」原則の下で,いかに教育されるべきか問われている。本稿では,筆者が教育史講義で使用している教材を紹介し,講義内容の一端を知ってもらえるようにした。筆者の研究領域である大正新教育運動は,1910年代から30年代前半にかけて展開された,主として初等教育における児童中心主義的な思想と実践である。従来の画一的・形式的な一斉教授法に対して,児童の個々の特性や主体性,活動性に配慮した教授・学習方法を導入した点に特徴がある。本稿においては,大正新教育運動の拠点となった新学校の教育実践を明らかにするとともに,綴方教育や芸術教育運動についても考察している。