著者
鈴木 千賀志
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1713-1718, 1965-12-20

Ⅰ.肺化膿症 肺膿瘍は,ブドウ球菌,連鎖状球菌,肺炎球菌,フリードレンデル肺炎桿菌などによつておこり,こわれた肺組織,滲出液,多核白血球,リンパ球,大単核細胞およびこれらの残骸から成る単純な膿瘍であり(非腐敗型),肺壊疽は,肺組織がこわれて液状壊死に陥つたもので,主として紡錘桿菌,スピロヘータなど口腔内に常在する腐敗菌の混合感染によつておこり,喀痰は悪臭を放ち,放置すると数層に分離すること(腐敗型)が特長とされた。これらの発生経路は,直達性や血行性感染のものもあるが,口腔または鼻腔内細菌の吸引による気管支の栓塞,閉塞および肺感染による壊死によつておこるものが多く,かつこれら両者の区別が明らかでない場合が多いので,今日では「肺化膿症」の総称名で呼ばれるようになつた.