- 著者
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苣木 浅彦
鈴木 喜義
- 出版者
- The Society of Resource Geology
- 雑誌
- 鉱山地質 (ISSN:00265209)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.41, pp.152-167, 1960-06-30 (Released:2010-03-04)
- 参考文献数
- 19
以上述べた事柄を要約すればつぎのようである.1)与内畑鉱山の鉱床は第三紀中新世上部に属すると思われる黒色泥岩層を母岩とする黒鉱式石膏鉱床である.2)産出鉱物としては石膏のほかに少量の黄鉄鉱,黄銅鉱,閃亜鉛鉱および方鉛鉱の金属硫化鉱物,硬石膏,螢石,重品石および方解石などを随伴する.3)上記産出鉱物の生成順序は第17図のようで,硬石膏,螢石,重晶石および方解石はしばしば石膏にて交代せられている.4)石膏鉱体は塊状を呈し,その中央部は塊状石膏を主とする高品位部であるが,その周辺部は母岩の粘土分を混えて鉱染ないし網状石膏鉱体となり,さらにその外緑部は繊維石膏の細脈を伴う黒色粘土化帯に移化する.5)黒色泥岩層中に挾有される凝灰質泥岩は前者に比して石膏の鉱化作用を蒙りがたく,しばしば部分的にcap rock的な役割をなし,その下盤に接して石膏鉱体を胚胎している.6)母岩の変質は著しい粘土化作用と,都分的な珪化詐用とがあり,揃者は石膏の鉱化作用とほぼ時を同じくして行なわれ,後者はこれに先行するものと考えられる.7)粘土化作用による化学的成分の変化は第2表のごとくで著しいMgOの増加と脱珪作用とが特徴的で,ごの結果苦土緑泥石およびモンモリオナイトの生成がみられる.8)黒色泥岩はこれに挾有される凝灰質泥岩に比し人工鉱液に対し石膏を生成しやすく,かつまた,より容易に溶液の拡散を受けやすい.9)本鉱床産石膏の大部分はCa¨およびSO4′′を含む鉱液の物理的条件の変化にもとづく化学沈澱によると推察され,鉱体はある一定のhorizon付近,あるいはその当時の地表より一定の深度付近に胚胎したものと考えられる.