著者
鈴木 文武 岡本 友好 船水 尚武 伊藤 隆介 藤岡 秀一 矢永 勝彦
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.906-910, 2014 (Released:2015-10-30)
参考文献数
16

症例は70歳男性.繰り返す胃潰瘍で近医加療中,腹部CT検査にて膵体部に58mm大の腫瘤を指摘され,当院紹介受診となった.潰瘍部より2度の生検が行われたが,いずれも良性の診断であった.血液生化学検査では,CEA14.1ng/ml,CA19-9 45U/ml,AFP 507ng/mlと腫瘍マーカーの上昇を認めた.当院の腹部超音波検査では,膵体部に内部不均一で比較的境界明瞭な等~低エコーの腫瘤として描出された.超音波内視鏡下穿刺吸引生検の結果,低分化腺癌を認めた.膵悪性腫瘍の診断にて膵体尾部切除,リンパ節郭清を行った.術中に胃前庭部に漿膜側へ突出する腫瘍を認めたため,幽門側胃切除術を併施した.術後病理組織診断では,胃はAFP産生腫瘍であり,膵の腫瘤は胃癌の転移リンパ節であった.以上,膵腫瘤が発見契機となったAFP産生胃癌膵周囲リンパ節転移の切除例を経験した.膵腫瘤性病変にAFPの上昇を伴った場合は,胃の十分な精査が肝要と考えられた.