著者
鈴木 知準
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1077-1082, 1971-11-15

Ⅰ.はじめに さきに慈恵大学の野村1)は,森田が神経質の治療法を考究したとき,永平寺の修行を参考にしたのではないかと論じている。これは極めて興味深い発言であり,このことに関する論説はまだ発表されていない。森田の著書,論文を読んでも永平寺のことにふれているものはみあたらないようであるので,森田が永平寺の修行様式から直接影響をうけたことはないもののように思惟される。 しかし,新福2)のふれているように日本の禅的文化の背景下にそだった森田によって発見されたこの療法技法が,道元と同じかあるいは極めて近縁の道を歩むに至ったと考えるのが当を得ているようである。以下森田の療法と道元の永平寺の修行の相似相関について考察してみたい。