著者
鈴木 麻友 谷本 公重
出版者
国立大学法人 香川大学医学部看護学科
雑誌
香川大学看護学雑誌 (ISSN:13498673)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.25-35, 2022-03-30 (Released:2022-04-05)
参考文献数
41

目的:NICUに入院した早産児を対象に,母親によるカンガルーケア提供時の心拍変動への客観的影響を探索的に確認する.方法:NICUに入院中の早産児7人を対象とし,NICUで児の修正週数32~34週の間に行われたカンガルーケアにおいて,まだカンガルーケアが開始されていない未実施時と初回,2回目,3回目のカンガルーケア実施中とその前1時間の,児の心拍データを抽出した.心拍データから心拍変動のスペクトル解析を行い,心拍数(Heart Rate,以下HR),Low Frequency(LF),High Frequency(HF),LF/HFを確認した.結果:カンガルーケア実施前1時間に比べ,カンガルーケア実施中のHRが低下していた回数は11回中4回であり,カンガルーケア未実施時に比べ,カンガルーケア実施中のHRが低下していた回数は14回中8回であった.カンガルーケア実施前1時間に比べ,カンガルーケア実施中のLF/HFが低下していた回数は11回中6回であり,カンガルーケア未実施時に比べ,カンガルーケア実施中のLF/HFが低下していた回数は14回中6回であった.LF,HFのパワースペクトル図では,全ての児,全ての測定時期において,LFにのみピークを認め,LFよりHFの方が低い値を示した.カンガルーケア実施時のHRの平均値は155.5±12.45回/分,LF/HFの平均値は6.16±1.78であった.結論:本研究結果では,早産児へのカンガルーケア提供時において,HR,LF/HFは一定の傾向を示さなかった.LF,HFのパワースペクトル図ではLFよりHFが低く,これは早産児の呼吸の未熟性を示唆する.また,HRやLF/HFの平均値は,本研究の対象となった早産児の約半数が,カンガルーケア中,自律神経の状態が睡眠に近い状態であったことを示唆する.