著者
鎌谷 勇宏
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学大学院研究論集
巻号頁・発行日
no.11, pp.81-92, 2017-03-20

ソーシャルインクルージョンの議論に奥行きを持たせるため、属性と社会政策的貧困論をキーワードにして社会保障の歴史を再検討した。現在、社会保障や社会政策において主要なテーマとして掲げられているソーシャルインクルージョンは属性分類を極力行わない方向で制度化されていることに対して、社会保障発展の歴史はいかに属性を分類し制度対象として含めていくかの歴史であった。歴史を長い目で概観すると、属性分類制度から非属性分類制度に変化したことになるが、この過程やその特徴を明らかにするためイギリス新救貧法(1834)の分析を行った。 その結果、14 世紀から18 世紀末までは静学的属性分類が制度発展を牽引し、18 世紀末には動学的属性分類も行われるようになった。しかし1834 年の新救貧法制定段階になると、属性ではなく社会政策的貧困論が社会保障政策に大きな影響を及ぼしたことを明らかにした。