著者
長澤 公洋
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.443-451, 2013-11-01

大学等の教育研究活動の成果である学術情報は,高度な教育研究の展開,将来の社会発展,国際競争力の強化につながる情報であることから,その流通基盤の整備は極めて重要である。国の施策の方向性として,第4期科学技術基本計画では,機関リポジトリの構築や電子化による体系的な収集・保存,オープンアクセス,第2期教育振興基本計画では,学生の主体的な学習のべースとなる大学図書館の機能強化,ICTを活用した双方向型の授業・自修支援を促進するとされ,世界的な流れとしては,オープンアクセスやオープンデータの必要性がクローズアップされている。学術情報流通における課題としては,主な要素ごとに,論文では,日本のジャーナルの国際発信力強化,図書については,電子書籍化への対応,データについては所在の把握・流通体制の整備教材・講義については保存.共有の促進とともにオンライン教育の充実があり,全体的には,機関リポジトリにおけるコンテンツの充実やクラウド環境の構築による学術情報の効果的な流通・利活用の促進を進めるべきである。最近のICTの進展は著しく,学術情報流通に関わる環境変化も大きい。各大学がこうした流れを的確に把握し,大学としてふさわしい学術情報流通基盤の充実・高度化に大学全体で取り組むことが重要である。