著者
阿久津 哲也 清水 得夫 上原 伸夫
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.693-698, 2009-08-05
参考文献数
18
被引用文献数
2

<i>in situ</i>抽出剤生成法とミクロ溶媒抽出法を組み合わせた水試料中のクロム(III)とクロム(VI)の分別法を開発した.試料水25 mLに,モル比を1 : 2とした二硫化炭素とピロリジンを3 v/v% 含むキシレンの混合溶媒を500 μL加え,ミクロ溶媒抽出して50倍濃縮を行った.有機相を分取し,黒鉛炉原子吸光測定した.pH 3.0においてクロム(VI)は,系内で生成したピロリジンジチオカルバミン酸と錯形成し,選択的に抽出される.pHを6.0として35℃ の水浴で30分間加温することで,酸化することなくクロム(III)をクロム(VI)と共に抽出できる.50倍濃縮における検量線は直線性を示し,クロム(VI)及び全クロム[クロム(III)]の検出限界(3σ)はそれぞれ0.75 ng/L,0.64 ng/Lであった.本法をミネラルウォーターと河川水試料に適用した.また,添加回収試験を行ったところ,本法は水試料中のクロム(III)とクロム(VI)の分別に有用であることが分かった.