著者
陶山 吉喬
出版者
京都府立医科大学
雑誌
京都府立医科大学雑誌 (ISSN:00236012)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.557-"596-2", 1940

著者ハ門脈ニ分布スル末梢神經及ビ其ノ終末ニ就テ中毒及ビ再生實驗ヲ試ミ,尚併セテ二三神經ノ切斷實驗ヲモ施行シ次ノ結果ヲ得タ.尚實驗動物ニハ鳩,家兎及ビ犬ヲ用ヒタ.1.中毒實驗ニ依リテ發現スル門脈分布神經終末ノ變化ハ退行性過程ヲ主トシ一部ニ於テ再生過程ガ見ラレル.2.退行性病變ニ於テハ神經要素ノ腫脹ト萎縮ガ現レル.此ノ場合腫脹ハ主トシテ實驗ノ初期ニ,萎縮ハ其ノ末期ニ發現シ,而シテ其ノ各々ニ就テ更ニ病變ノ程度ヨリ之ヲ單純型ト複雜型トニ分類シ得ラレル.3.之等ノ中毒實驗ニ於テハ其ノ種類ノ如何ニヨリテ神經要素ノ變化ニハ輕重及ビ遲速ガアルガ;變性ノ程度ノ強イモノカラ順ニ之ヲ記載スルト,鉛,ぢふてりー毒素,白米病,にこちん,あるこほーる,あどれなりん,ぴうかるぴん,ひよりん,あとろぴん及ビぷろんとじるトナル.4.以上各種中毒ノ際ニ現レル神經ノ變性像ハ一般ニ或程度ノ共通點ヲ持ツテハヰルガ,他方變性ノ發現方法ニハ一定ノ差違ガアルヲ常トスル.從ツテ其ノ組織像ハヨク之ヲ習熟スルト一見直ニ毒物ノ種類ヲ推定スル事モ至難デハナイ.次ニ各種中毒實驗ノ變性ニ就テ記載スルト,a.鉛中毒:正常状態→單純腫脹→單純萎縮→複雜萎縮.b.ぢふてりー毒素中毒:正常状態→複雜腫脹→複雜萎縮.c.白米病:α.急性白米病:正常状態→單純腫脹→單純萎縮.β.慢性白米病:正常状態→單純腫脹→單純萎縮→複雜萎縮.正常状態→單純腫脹→(又ハ)複雜萎縮.d.にこちん中毒:正常状態→單純腫脹→單純萎縮→複雜萎縮.e.あるてほーる中毒:正常状態→複雜腫脹→複雜萎縮.f.あどれなりん中毒:正常状態→單純腫脹→(又ハ)複雜腫脹→複雜萎縮(輕度).g.ぴうかるぴん中毒:正常状態→單純腫脹→單純萎縮.h.ひよりん中毒:正常状態→單純腫脹(輕度)→單純萎縮(輕度).i.あとろぴん中毒:正常状態→單純腫脹(輕度)→單純萎縮(輕度).j.ぷろんとじる注射:正常状態→單純腫脹(輕度).5.ぴろかるぴん,ひよりん及ビあとろぴんニテハ無髓繊維ノ中ノ細キモノガ特ニ強イ障礙ヲ受ケル.6.ぷろんとじる注射ノ場合ニ於テモ輕度デハアルガ神經繊維ノ腫脹ヲ見タ.7.神經繊維ノ再生實驗ニ於テハ實驗後ノ第1週ノ後半ニ於テ再生繊維ガ見ラレ,第21日目ニハ最モ強イ傾向ガ窺ハレタ.其ノ他尚中毒實驗ノ中,比較的毒力ノ弱イモノ,即チあとろぴん,ぴろかるぴん,ひよりん,白米病及ビあるこほーる等ニ於テモ再生繊維ヲ證明スル事ガ出來タ.8.迷走神經又ハ大小内臟神經ノ切除ノ場合ニハ門脈ノ神經繊維ニハ何等ノ變化モ現レナカツタ.9.太陽神經叢ノ切除ノ場合ニハ門脈神經ノ一部ニ變性ガ現レタ.即チ太陽神經叢ハ一部門脈ニ分布スル神經繊維ノ中間驛ヲツトメルモノト思推ゼラレル.